断熱性を表す等級とは?それぞれの違いなどを解説
新築で住宅を建てる際に、断熱性について考えることもあるでしょう。住宅の断熱機能を指標で表すのが、断熱等級です。断熱等級は段階が分けられており、これから建てる家はどのように気にするべきか迷うかもしれません。近年基準が変わった点もあるため、断熱に関する注意点や住宅に取り入れる時のポイントも押さえておきましょう。今後変わっていくと思われる規格も含めて、さまざまな観点から断熱等級について解説していきます。
新たな基準になった断熱等級とは?
住宅における断熱の機能性を数値として取り決められたのが、断熱等性能等級であり、断熱等級と呼ばれています。品確法をもとに、さまざまな住宅の性能を明確に表示する制度として2000年に施行され、ほかにも耐震等級や耐火等級などの基準が示されました。
断熱等級の段階
現在設けられている断熱等級は1から7までに段階分けされており、等級の数字は1が最も性能が低く、7に近づくほど断熱の性能が上がります。断熱等級が明確に定められた当初から、2022年3月までは4が最高の数値でした。
環境問題が注目され、温室効果ガスの排出量削減に向けて断熱等級の段階も増えたという背景があります。2022年4月から等級5が施行され、同じ年の10月には等級6、7が施行されたため、現在は7が最高等級です。
等級4の住宅は2022年まで最高ラインでしたが、2025年の4月からは最低ラインの数値となります。2030年以降に建設する住宅は、新たに増えた等級5のZEH水準を満たす数値が必要です。
断熱等級6以上は、熱損失を削減するための対策が大きく講じられており、省エネ効果も高い水準です。4から6や7に上げることで、約30%~約40%の省エネにつながると言われており、環境問題に考慮して住宅を建てるのであれば、等級6や7を目指すとよいでしょう。
断熱等級が高いとどうなる?
家の断熱性が高いというのは、部屋の中から逃げる熱と屋外から入ってくる熱の出入りがしにくいということです。高機能な断熱が取り入れられている住宅は、屋内の温度変化が少なくなるため、その分エアコンや暖房器具の使用量を抑えられ、省エネにつながります。
家屋内の気温差を下げられるため、ヒートショックのような健康リスクの低減にも役立ち、快適な住宅での生活をサポートします。夏場に冷房を使用する際も、快適な室温から変化しにくくなるため、エアコンを長時間使用することによる冷えや光熱費といった問題も解決できるでしょう。
近年増えている在宅ワークですが、自宅での作業効率においても断熱性能が関わっています。室内から熱が逃げにくくなることで、人が快適だと感じる温度を保てるため、暖房のかけすぎでぼんやりしてしまう、または寒くて集中できないということも防げるでしょう。
高性能な断熱を備えた住宅は、人の生活を快適にするとともに、環境にも良い影響をもたらすと考えられます。これから新しく家を建てる場合は、先のことを考えて断熱等級を選んでみるとよいでしょう。
断熱等級ごとの違い
断熱等級といっても地域によって平均気温が異なるため、同じ室内気温を保てるよう、地域によって異なるUA値とηAC値が設定されています。室内と外気を行き来する熱の通りやすさをUA値であり、冷房を使用する時期に太陽の日射熱が室内に入る量を表す数値をηAC値です。
地域の気候に配慮した地域区分
日本は南北に伸びる地形であることから、同じ時期でも地域により気温が大きく異なります。同じ性能を発揮させるためには、対策にも違いが出てくるため、地域を8つに区分けしてそれぞれの気候に合わせた数値が設定されています。
UA値は室内と室外で熱の通りやすさを表す数値のため、数値が小さくなると通り抜ける熱の量が小さく、0.4と0.6では0.4の方が断熱性能が高いと言えます。
断熱等級5のUA値をもとに地域区分の違いを比べてみると、おもに北海道が区分される1地域では0.4以下とされており、鹿児島や宮崎の7地域では0.6以下と設定されていて、同じ等級でも1地域ではより高い断熱の機能が必要です。
同じ都道府県内でも地域区分が異なることがあるため、新築で住宅を建てる際は、どこの地域区分になるか確認しましょう。
省エネルギー住宅との違い
断熱等級と深く関わるのが、省エネルギー住宅という言葉です。国による基準が定められており、省エネ性能を備える住宅のことを省エネルギー住宅と呼びます。
省エネルギー住宅は、室内から外に逃げるエネルギーを抑え、外からの熱を遮断するため、一定の断熱性能が備わっていることが欠かせません。断熱性能とともに、空調や照明、給湯といった設備にも省エネルギーな機能が備わっているかどうかも関係します。
断熱性と設備による一次エネルギー消費量等級と、断熱等級のどちらも4以上であることが必要です。省エネルギー基準は平成以前から制定されていましたが、住宅を建てるうえでの義務化はされていませんでした。
今まで義務ではありませんでしたが、2025年4月からは新たに建てる建築物に義務づけられることが決まりました。省エネルギー基準を満たす数値は等級4以上であるため、今後断熱等級1から3の住宅を新築では建てられなくなるでしょう。
断熱等級の高い家の建て方
機能性の高い断熱材を使用するだけでは、効果を十分に発揮できないこともあるため、省エネ住宅の施工実績があるかどうかも重要です。希望する機能が備わった家づくりができるかどうか、自分の目で判断できるよう注目するポイントを確認しましょう。
新築で高い断熱等級にするメリット
2025年からは省エネルギー基準が義務化されるため、少なくとも断熱等級4以上が必要です。2030年までにZEH水準への準拠の義務が予定されているため、できる限り等級が高い住宅を目指しましょう。
まだ新築で満たさなければいけない条件が断熱等級4であっても、これから断熱等級5以上の新築物件が増える可能性があることを考慮し、なるべく高い水準で住宅を建てることが資産価値にも影響すると言えます。断熱性能の高い家は快適に過ごせるため、光熱費も抑えられる点もメリットです。
今後さらに住宅に関する性能が上がっていくと推定されるため、断熱等級はなるべく高い方が望ましいですが、最低でも等級5を選んでおくとよいでしょう。
断熱性能と一緒に気を付けるポイント
断熱のレベルが高い住宅は、機能性のある断熱材を使用するだけではなく、住宅の気密性もカギを握っています。高価な建材を使用しても隙間のある住宅では、熱が通り抜けてしまい断熱の性能が低下してしまうでしょう。
気密性のある住宅を建てるためには、施工業者の技術が欠かせません。気密性の高さを計測してくれて、高断熱の住宅に関する実績が豊富な業者を選ぶとよいでしょう。
気密性とともに窓の配置や外壁のカラーリングといった、さまざまな観点から計算することも大切です。断熱材の種類や間取りによる通気性と、住宅性能の関連性について丁寧に説明してもらえるよう、積極的に質問してみましょう。
適用条件や金額もさまざまですが、ZEH水準や省エネ基準を満たす住宅を建てる際に利用できる補助金もあります。住宅の規格が変わることで、補助金の内容も変わる可能性があるため、最新の情報を取り入れて活用しましょう。
まとめ
住宅における断熱等級は7段階に分けられており、等級の数値で住宅の断熱レベルを示しています。断熱機能が意識された住宅は、人が暮らすうえで快適な室温を保てるだけではなく、空調の使用量を減らし、地球温暖化対策にも役立ちます。新築住宅に義務付けられるさまざまな規格が変化していくため、住宅を建てる際には現在施行されている法律や今後の動きを把握することが大切です。断熱等級が高い住宅を建てる際に使える補助金もあるので、合わせてチェックしておきましょう。