動物系固形不要物とは?牛海綿状脳症(BSE)についても解説
動物系固形不要物は、家畜のと畜時や食鳥の処理時に発生する不要物のことです。と畜時に発生する動物系固形不要物は、正しい手順で処分しなければなりません。また、牛海綿状脳症(BSE)の問題についても、本記事で解説します。本記事をきっかけに、と畜時に発生する不要物をどのように処理するのか知っていただけると幸いです。
動物系固形不要物の概要
動物系固形不要物は、産業廃棄物の一種であり、畜場や食鳥処理場などで処理された獣畜や食鳥などの固形状の不要物を指します。
産業廃棄物は、事業活動にともなって発生する廃棄物全般を指し、なかでも特定の業種から発生する廃棄物があります。動物系固形不要物は、畜産業や食鳥処理業から発生する廃棄物に限定されます。動物系固形不要物の廃棄量統計によれば、平成28年度の排出量は81千トンであり、産業廃棄物全体の排出量に対する割合は0%でした。
統計結果から考えると、動物系固形不要物は全体的には排出量が少ない傾向があります。前年度の平成27年度に比べると、排出量は減少しています。また、動物系固形不要物の処理状況を示す統計では、再生利用量が76%、減量化量が21%、最終処分量が2%だと示されています。
つまり動物系固形不要物は再生利用や減量化が積極的におこなわれており、最終処分への割合が比較的低いのです。動物系固形不要物の処理は、再生利用や減量化の取り組みがおこなわれている一方で、最終処分に関しては改善の余地があるかもしれません。
環境保護や資源の有効活用を考えるうえで、さらなる取り組みや技術革新が求められるでしょう。
動物系固形不要物の処分方法
動物系固形不要物の処分方法とリサイクル方法について、具体的な手法や過去の事例に触れながら詳細に説明します。
まず、動物系固形不要物の処分方法として一般的におこなわれているのは焼却処理です。固形不要物が焼却炉で高温で燃焼され、焼却灰となった後に最終処分場へ埋め立てられます。焼却処理は比較的効率的であり、廃棄物の量を減少させます。
一方で、焼却灰のリサイクルもおこなわれています。焼却灰はセメント原料や路盤材などの建材として再利用されます。焼却灰のリサイクルは廃棄物の処分量を削減するだけでなく、資源の有効活用にもつながります。過去には、牛の固形不要物を肉骨粉に加工して飼料としてリサイクルする取り組みがありました。
しかし、以下で詳しく解説する牛海綿状脳症(BSE)の問題が発生し、肉骨粉を飼料とする流れは大きく変わりました。2001年10月に農林水産省が肉骨粉等の製造や販売に対して一時停止を要請し、飼料としてのリサイクルが制限されました。制限措置は安全性の確保を目的としており、BSEなどの伝染性疾患の拡散を防ぐための措置でした。
このように、動物系固形不要物の処分方法やリサイクル方法は時代や社会の要請によって変化しています。安全性や環境への配慮が重視されるなか、より効果的な処分方法やリサイクル手法の開発が求められています。今後も技術の進化や環境政策の変化に合わせて、適切な対策が求められるでしょう。
牛海綿状脳症(BSE)に関する問題とは
牛海綿状脳症(BSE)は、牛がBSEプリオンと呼ばれる病原体に感染して起こる疾患です。
BSEプリオンに感染すると、牛の脳組織が異常なスポンジ状に変化し、異常行動や運動失調などの症状が現れ、最終的には死にいたることもあります。BSEは1980年代後半からイギリスを中心に発生し、ほかの国々にも広がりました。日本でも2001年9月以降、36頭の感染牛が確認されました。
日本ではBSEが問題化する以前、と畜場から発生する牛の骨などはレンダリング業者によって買い取られ、廃棄物としては排出されていませんでした。しかし、2001年9月に千葉県で日本国内初のBSE感染牛が確認されると、政府は迅速に対策を講じました。
農林水産省は同年10月1日肉骨粉等の当面の取り扱いについて、飼料用や肥料用の肉骨粉などの製造および販売の一時停止を要請しました。さらに、環境省に対してはレンダリング業者が保持する余剰分の肉骨粉などの隔離や焼却の円滑な実施協力を要請しました。
厚生労働省も、と畜場から排出される牛の脳や脊髄の焼却を指導する通知を出しました。政策により、と畜場から新たな廃棄物が生じました。牛の骨や脳などの廃棄物の適切な処理が必要とされ、焼却などが推奨されるようになったのです。安全のための対策により、BSEの感染拡大を防ぐとともに、安全性の確保が図られています。
まとめ
動物系固形不要物は、畜場や食鳥処理場などで発生する家畜や食鳥の屠畜時に出る不要物です。動物系固形不要物は、適切な処理が不可欠です。一般的には焼却処理がおこなわれ、焼却灰は再利用されます。しかし、牛海綿状脳症(BSE)の問題により、牛の肉骨粉を飼料としてのリサイクルが制限されました。BSEは牛が感染する伝染性の疾患であり、2001年以降、日本でも感染牛が確認されました。政府は迅速な対策を講じ、肉骨粉の製造や販売を一時停止し、牛の脳や脊髄の焼却を指導しました。政策により、BSEの感染拡大を防ぎ、安全性を確保しました。動物系固形不要物の処理やBSE対策は、環境保護と安全性確保の観点から重要です。今後も技術の発展と環境政策の変化に適応しながら、効果的な処理方法とリサイクル手法の開発が求められます。